企業再生支援機構で中小・中堅企業を再建
・日本航空の経営再建をめぐって「企業再生支援機構」の活用が話題になっていますが、この企業再生支援機構というのは、技術力や有力顧客を持ちながら販売不振、過剰債務などの経営課題を抱えている地方の中小・中堅企業の再建支援を目的として立ち上げられたものです。
・企業再生支援機構は、取引金融機関から支援対象企業の債務を買い取って、出資と融資をするとともに、必要な人材を派遣して、経営再建を進めます。再建資金は機構が政府保証によって金融機関から借り入れます。機構の計画では、支援対象企業の不採算事業の整理などによって3年以内に再生の目途をつけ、新たなスポンサーに保有株を売却して支援を完了するとされています。
・企業再生で問題となるのは課税問題です。支援企業が債務免除を受けると免除益による法人税が発生しますが、再建中の企業は資金繰りが厳しいのが通例です。政府は、この免除益を資産の評価損などと相殺できる手当てを行い、また、債権放棄をした金融機関は、その損失を課税所得から差し引くことができるようにするとしています。
・ところで、この機構が本来の目的を達成するには、さまざまの課題があります。
・まずは、3年以内に再生できる実現性の高い再生計画を描くことができるかという問題。人口の減少や経済のグローバル化の中で、販売減少、海外展開の出遅れ、原材料高などで不振に陥った企業の再生計画をつくるのは容易ではありません。そのため、過去に再生業務を経験した数十名の人材が大手監査法人、金融機関出身者などから集められるようです。
・第二に、再生計画の実行体制ができるかです。なかでも、再生会社のトップリーダーに適任者が得られるかどうか。知力、体力、胆力を備えた人材がいなければ、再建の舵取りは難しいのではないでしょうか。
・そして、第三に支援対象企業の現場の人材です。現場力の強さが日本企業の特徴であるといわれます。トヨタの強さは、創意工夫して物づくりに励む統率のとれた組織と、まじめな人材のいる現場です。どんなに立派な再生計画を作り、優れたリーダーを得たとしても、強い現場力がなければ再生は困難でしょう。
・企業再生支援機構が本来の目的を達成し、雇用が確保され、地域経済が活性化されることは誰にとっても望ましいことであり、機構に大いに期待したいと思います。