・平成23年度税制改正に関して継続審議となっていた一部の法律が12月2日に成立し、公布されました。これにより「更正の請求」制度について請求期間の延長などの改正が行われています。
・更正の請求とは、確定申告書の提出後、所得金額や税額を実際より多く申告していたことに気づいた場合に、当局に訂正を求める手続きです。従来、請求期限は法定申告期限から1年とされていましたが、改正により12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については、期間が原則として5年に延長されました。 ・また、更正の請求を行うことができる申告内容の対象範囲も拡大されました。当初の申告で、申告書に適用金額や控除額を記載した場合に限り認められる措置のうち、一定の措置について更正の請求や修正申告書でも適用などが受けられます。具体的には所得税の「給与所得者の特定支出の控除の特例」や法人税の「受取配当等の益金不算入」、「外国税額控除」、相続税の「配偶者に対する相続税額の軽減」などが対象となります。
・12月2日より前に法定申告期限が到来する国税の更正請求期限は、従来どおり1年ですが、更正の請求の期限を過ぎた課税期間について、国税当局による増額更正ができる期間内に「更正の申出書」を提出し、調査により納めすぎの税金があると認められた場合は減額更正を行います。ただし申出のとおり更正されない場合であっても、不服申し立てすることはできません。 ・今回の改正では、更正の請求の際、請求理由の基礎となる「事実を証明する書類」の添付の必要を明確化しています。偽りの記載をして更正の請求書を提出した場合の、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則規定も創設されました。
・東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税を盛り込んだ復興財源法など平成23年度第3次補正予算関連5法が11月30日、参院本会議で民主・自民・公明各党などの賛成多数で可決・成立しました。
・このうち、東日本大震災からの復興を図るための平成23年度から27年度までの集中復興期間において実施する施策に必要な財源を確保するため所要の措置を講じる「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案」及び「東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源確保に係る地方税臨時特例法案」の両法案は、10月28日に閣議決定・同日国会に提出され、11月7日に衆議院の財務金融、総務の委員会へ付託されていました。
・その後、22日に両法案とも修正議決されて24日の本会議で賛成多数で可決、参議院へ送付されました。参議院では、25日の付託後、財政金融、総務の委員会で実質29日のみの審議で可決されました。
・両法案の成立により、復興特別税として国税関係では、1)平成25年1月から49年12月まで所得税額に対して2.1%の「復興特別所得税」及び2)平成24年度から26年度まで法人税額に対し10%の「復興特別法人税」が創設され、地方税では個人住民税が平成26年6月から10年間にわたり年1,000円引き上げられます。
・なお、法人税に関しては、11月30日に成立した「経済社会構造の変化に対応した税制構築を図るための所得税法等改正法」により、実効税率をいったん5%引き下げた上で3年間に限って税額を10%上乗せすることになります。
・今年も年末調整の時期が近づいてきました。年末調整は、給与の支払を受ける人の一人一人について、毎月の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めるべき税額とを比べて、その過不足額を精算する手続きです。
◆年末調整の対象者 本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人や年の中途で退職した人(死亡、出国等など一定の場合を除く)は、年末調整の対象にはなりません。対象になる人は、1年を通じて勤務している人や、年の途中で就職し年末まで勤務している人です。
◆年末調整の対象となる給与 年末調整の対象になる給与は、その年の1月1日から12月31日までの間に支払うことが確定した給与であるため、未払の給与や賞与であっても、本年中に支払の確定したものについては対象になります。一方、給与の支給日が月末締め翌月10日支払の場合は、12月分は翌年1月10日に支払われることになりますので、翌年の収入になることが確定しているため、年末調整の対象外となります。
◆昨年と比べて変わった点 変わった点は、主に次の2点です。 (1)扶養控除の見直し 年齢16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)に対する扶養控除は廃止とされました。 これに伴い、扶養控除の対象が年齢16歳以上の扶養親族(控除対象扶養親族)となりました。 また、年齢16歳以上19歳未満の人の扶養控除の上乗せ部分25万円が廃止されました。これに伴い、特定扶養親族の範囲が19歳以上23歳未満の扶養親族に変更されました。 扶養親族とは、納税者本人と生計を一にする親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)等で合計所得金額が38万円以下の人をいいます。 (2)同居特別障害者加算の特例見直し 年少扶養親族に対する扶養控除が廃止されたことに伴い、この加算特例も見直され、納税者の控除対象配偶者又は扶養親族(年齢に係らず)が同居特別障害者である場合には、一人につき控除額75万円とする制度に改められました。 同居特別障害者とは、控除対象配偶者又は扶養親族のうち特別障害者に該当する人で、納税者本人等と同居を常況としている人をいいます。
・平成24年1月1日以後に新たに締結した生命保険契約等について、新たな生命保険料控除が適用されます。
・まず介護医療保険料控除が新設されます。 平成24年1月1日以後に契約締結した生命保険のうち、法令に定める「介護医療保険契約等」の対象となる契約に係る保険料等について、適用限度額を所得税4万円、個人住民税2.8万円とする介護医療保険料控除が設けられます。 ・また、一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除について、平成24年1月1日以後に契約締結した生命保険契約等について、適用限度額が所得税4万円(現行5万円)・個人住民税2.8万円(変更ありません)となります。
・これにより、平成24年1月1日以後に契約締結した場合の生命保険料控除・個人年金保険料控除及び介護医療保険料控除を合わせた全体の適用限度額が、所得税は12万円(現行10万円)となります(個人住民税は7万円で変更なし)。 また、新制度による所得税の所得控除額は、 ①2万円以下は、支払保険料等の全額 ②2万円超4万円以下は、支払保険料等×1/2+1万円 ③4万円超8万円以下は、支払保険料等×1/4+2万円 ④8万円超は、一律4万円となります。
・同じく個人住民税の所得控除額は、 ①1万2千円以下は、支払保険料等の全額 ②1万2千円超3万2千円以下は、支払保険料等×1/2+6千円 ③3万2千円超5万6千円以下は、支払保険料等×1/4+1万4千円 ④5万6千円超は、一律2万8千円となります。
・なお、平成23年12月31日以前に契約締結した生命保険契約等に係る控除については、平成24年1月1日以降も旧制度が適用されますので、ご注意ください。 ・また、平成23年12月31日以前に契約締結した生命保険契約であっても、平成24年1月1日以後に「更新」や「特約の中途付加」を行った場合には、新制度が適用となりますのでご注意ください。