・会計検査院は10月17日、新規事業開始後2年間の消費税納税義務免除制度について、再検討するように財務省に要請しました。 ・会計検査院の調査では、売上が3億円を超える企業まで免税となっていたり、設立2年経過後に解散したりする制度乱用のケースもあったようです。
・この問題について税理士会は、以前から消費税の基準期間制度を廃止することを建議してきています。 ・前々年度を基準期間とする現行制度では、申告年度の課税売上高が多額であっても免税事業者となったり、反対に課税売上高が1,000 万円以下であっても納税義務が生じたりするような不合理な現象が生ずるからです ・税理士会の案は、基準期間制度を廃止し、申告年度の課税売上実績が1,000万円を超えていれば課税事業者、1,000万円以下なら申告自由とすべきというものです。
・免税・課税の有利不利を判定するには、1年ないし2年先の損益を予測しなければなりません。そして、そのような判定が必要なのは零細事業者だけなのに、国税当局は基準期間制度が生む弊害を零細事業者に押しつけてきました。 ・そこへ、身内の会計検査院から税収確保の観点から注文がついたため、早急に制度改正を迫られることになりました。
・消費税は、二重の意味で事業者課税の税制です。一つは、消費税の納税義務者は消費者ではなく事業者であること。もう一つは、事業者に国の徴税実務と徴税計算を押しつけて、税務署の下請け機関となることを強制していることです。 ・本来は、消費税の導入に際し、押しつけた国の徴税実務と徴税計算に要する費用を補填すべきだったのです。今からでも、税額控除という形で導入するのが道理です。 ・免税制度など廃止して、すべての事業者に申告義務を負わせても、徴税代行税額控除(月2.5万円、年30万円くらいが妥当)があれば、1000万円以下の売上なら納税額はほとんどゼロになります。
・消費税申告で基礎となる課税期間は、個人事業者は1月1日から12月31日までの暦年、法人は法人の事業年度とするのが原則です。そのため、消費税の還付申告は個人事業者では翌年の確定申告期、法人では事業年度終了後2ヶ月以内に行います。ところが、実際に還付を受けられるのは申告からさらに1~2ヶ月程度必要。つまり、暦年当初あるいは事業年度の早い時期に大きな設備投資をした場合は、その段階で多額の消費税を納めていても、還付されるのは1年以上も先になってしまいます。このタイムラグは経営者にとって大きな負担となります。
・少しでも早く消費税の還付を受けたい場合は、消費税の課税期間を短縮して早期に還付が受けられる特例を利用する方法があります。特例を適用すれば課税期間を3ヶ月または1ヶ月に短縮することもできるのです。 ・たとえば課税期間を1ヶ月にすれば、法人が1月に設備投資をした場合、3月までに還付申告することになるので、課税期間が1年の場合と比較して約1年早く消費税が還付されます。
・課税期間を短縮する特例を適用するには、短縮しようとする課税期間が始まる前日までに「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を所轄税務署に提出します。この届出があると、個人事業者は暦年開始以後3ヶ月(または1ヶ月)ごとに区分した期間、法人では事業年度開始の日以後、同様に区分した期間が課税期間となります。 ただし、課税期間を短縮すると、消費税を納付する場合は年に何度も申告をしなければならないので、煩雑な申告作業が強いられるのが難点です。また、最低2年間は元に戻すことができないので注意が必要です。