・中小企業では、社長(もしくは役員)が会社の運転資金などをポケットマネーで支払う場合があります。この場合、社長や役員から会社が資金を借り入れたということになり、経理上は借入金として処理することになります。
・ところが、その後も会社の資金繰り等が苦しいなどの理由で、その借入金が長期間にわたって返済されないというケースもあります。そのような場合、社長や役員からの贈与ではないかと税務署から疑われる場合があるので注意が必要です。
・もし、贈与と認定されてしまった場合、その資金は会社の収入(雑収入など)ということになり課税の対象となります。税務調査などで数年前の同行為について指摘された場合は「申告漏れ」(万が一「故意、悪質」と判断されてしまうと「脱税」)ということにもなりかねません。当然、多額の加算税などを支払うことになってしまいます。
・そのような事にならないよう、社長や役員が会社に資金を貸し付けた場合には借用書(金銭消費貸借契約書)を作成し、返済の方法等を決めておきましょう。また、貸し付ける資金は必ず会社の口座等を通すことも重要です。税務調査への対応では「疑われないこと」「説明できる資料があること」が何より大事なのです。
・なお、この場合、社長や役員に利息を支払う必要はありませんが、もし支払う場合は適正な利率で利息を計算するようにしましょう。特別な理由がないのに高い利息を支払ってしまうと、通常の利息分との差額が社長や役員への給与とされてしまう場合があります。
国税庁が国税広報参考資料として、「お済みですか?消費税の届出!」を公開しています。これは、平成21年度から新たに課税事業者となる個人事業主等に対して、必要な届出の周知を行っているものです。
■消費税の課税事業者届出
・個人事業者の場合、前々年を基準期間として、その基準期間の課税売上高が1000万円を超える場合、消費税の課税事業者になります。来年は平成21年ですから、その前々年の平成19年の課税売上高が1000万円を超えていれば課税事業者となり、1000万円以下であれば免税事業者になるわけです。
・現在、免税事業者の方が課税事業者になる場合や、逆に課税事業者の方が免税事業者になる場合、最寄の税務署に「消費税課税事業者届出書」または「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出する必要があります。個人事業者の場合、その提出期限は新たに課税事業者、または免税事業者になる年の前日ですから、来年(平成21年から)の場合は今年の12月31日が提出期限です。
・なお、課税売上高とは消費税が課税されている売上高のことをいいます。注意が必要なのは輸出売上で、輸出売上高は消費税が課されない(非課税)の売上ではなく、特別に税率0%が課されている課税(免税)売上です。したがって、課税売上高の計算においては輸出売上を含めて計算することになります。
■消費税の簡易課税制度選択届出
・基準期間の課税売上高が5000万円以下の場合は、簡易課税制度を選択することができます。簡易課税制度とは、個人事業主や小規模企業の経理事務を軽減するため、簡便な方式で納める消費税の額を計算できるようにした制度です。具体的には業種別に定められた「みなし仕入率」を利用して仕入税額控除ができるため、仕入・経費・資産購入等の際に支払った消費税を意識する必要があまり無くなります。
・この簡易課税を選択する場合も税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。提出期限は、簡易課税を適用する年の前日(適用が来年であれば今年の12月31日)です。
・簡易課税を選択するにあたって注意すべき点は、大きな設備投資等の予定の有無です。簡易課税を選択すると、大きな設備投資をした場合に得られる仕入れ税額控除の恩恵を受けられません。設備投資で支払った消費税が多額で還付金が得られるようなケースでも、還付金を受け取ることはできないのです。また、簡易課税制度は選択すると2年間は継続しなければなりません。つまり、簡易課税制度を選択するかどうかは、2年間分の設備投資計画を立ててから検討した方が良いのです。
・妻のヘソクリを、税務当局が「税務上の相続財産」に該当すると判断したことで、納税者と税務当局が争う審査請求事件がありました。
・税務当局は、妻名義の預貯金の一部を相続財産と認定し、更正処分および過少申告加算税、重加算税の賦課決定を行いました。この処分に対し相続人である妻は「妻名義の預貯金は夫との婚姻前から保有していた預貯金であって、妻固有の収入や生活費を節約して貯めたヘソクリだ」と主張し、その全部取り消しを求めたのです。
・国税不服審判所は、預貯金は「一般的にはその名義人に帰属するのが通常である」としたうえで、「しかし、別の名義の預貯金への預替えが容易で、形式上の名義を家族にすることもまれではない」とし、「その管理運用の状況、贈与の有無などを勘案して、その帰属を判断することが妥当」だとしました。さらに、妻の収入状況を「妻は婚姻時の持参金や先代からの相続財産はなく、婚姻後は定職についていない」とし、妻が生活費を節約して形成したと主張するヘソクリについては、「夫が家庭生活を妻に委任し、その費用を妻に渡すことはあり得ることであって、その事実をもって妻の財産になるわけではない」と結論付けました。
・そして、これらを総合的に勘案して、妻名義の預貯金は、「原資は夫が獲得した所得から賄われていることや、その管理運用の状況などを併せると、その帰属先は夫にあった」として、妻の主張を棄却しました。