・平成18年度の税制改正で導入された定期同額給与については、運用面で判断に困る場合がよくあります。定期同額給与とは「支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、その事業年度内の各支給時期における支給額が同額である給与」(法法34-1-1)をいい、一般的には毎月の役員報酬がこれにあたります。
・その判断に困る例のひとつが、事業年度内における定期同額給与の改定です。基本的に、定期同額給与の改定は事業年度開始の日から3ヶ月以内に行なう必要があります。これ以外で改定が認められるのは (1)役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更等による改定 (2)経営の状況が著しく悪化したこと等による改定 (3)改定が3ヶ月経過後になることについて「特別の事情がある」ときです。
・このたび国税庁が公表した「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)の趣旨説明」では、(3)における「特別の事情がある」と認められる場合について具体的な説明がされています。
・それによると、「特別の事情があると認められる場合とは、役員給与の額の改定につき組織面、予算面又は人事面等において何らかの制約を受けざるを得ない内外事情がある場合が該当するものと解される」ということで、法人税基本通達(9-2-12の2)において具体的な例示がされています。
■全国組織の協同組合連合会等でその役員が下部組織である協同組合等の役員から構成されるものであるため、当該協同組合等の定時総会の終了後でなければ当該協同組合連合会等の定時総会が開催できないこと ■監督官庁の決算承認を要すること等のため、3月経過日等後でなければ定時総会が開催できないこと> ■法人の役員給与の額がその親会社の役員給与の額を参酌して決定されるなどの常況にあるため、当該親会社の定時株主総会の終了後でなければ当該法人の役員の定期給与の額の改定に係る決議ができないこと
・要するに、一般的な法人においては、「特別の事情がある」と認められる場合が発生するケースはほとんどないということです。また、このような事情がある場合においても、「継続して毎年所定の時期に改定されるものでない場合は、その改定が臨時改定事由または業績悪化改定事由による改定に該当しない限りは、定期同額給与に該当しないことになる」ので留意する必要があるとされています。
・公的年金からの税金や社会保険料の天引きは、所得税の源泉徴収にはじまり介護保険料に拡大しました。さらに75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の保険料も、この4月から天引きが始まっています。
・今後、65~74歳が加入する国民健康保険料についても、この10月から年金天引きされることが決まっています。
・それでは、この先は何が天引きされるのでしょうか。4月30日に国会を通過した税制改正法の中に、地方税法の改正で公的年金から個人住民税を源泉徴収する制度が盛り込まれています。
・天引きの対象となるのは、老齢基礎年金等の支払いを受けている65歳以上の納税者ですが、給付額が年額18万円未満である場合や、徴収税額が年金給付額の年額を超える場合は対象とはなりません。制度が適用されるのは、平成21年10月支給分の老齢年金からとなります。
・総務省によると、個人住民税では500万人程度が該当するそうです。
・なぜ住民税を天引きするのでしょうか。平成19年からは、国税としての所得税よりも地方税としての住民税の方が重税になる人が増えます。
・年配者の住民税は本人が直接納付するために、負担感が大きく感じられます。これを天引きにして重税感を希薄にしようというのが本音かもしれません。
・この地方税制の改正については、全国市長会などからの強い要望があったそうです。しかし、この問題については広報が少なすぎるのではないでしょうか。たしかにひとりひとりの税や公的負担の総額に変化はありませんが、制度ができる前に、せめて年金受給者に対して充分な説明をすべきではないかと思います。
・4月1日より、リース取引の大半が売買取引とみなされることになりました。これにより、機械や設備をリースで賃借した場合においても、その機械や設備を資産計上した上で減価償却することが原則となります。
・ただし、「賃借人が賃借料として損金経理をした金額」については、「償却費として損金経理をした金額に含まれるものとする」(法令131の2-3)ことになっており、リース会計基準を導入する必要のない中小企業などでは、いままで通り「賃借料」での処理が認められています。また、この場合には、法人税申告書別表十六「減価償却資産に係る償却額の計算に関する明細書」への記載も必要ありません。
・具体的には、棚卸資産の評価基準について「棚卸資産の期末における時価が帳簿価額より下落し、かつ金額的重要性がある場合には、時価をもって貸借対照表価額とする。」ということが明記されました。これは、いままで棚卸資産の評価方法として原価法を採用した場合にのみ適用されていた基準です。
・ただ、消費税の処理には注意が必要です。
・消費税では、売買取引などで課税資産を取得した場合、取得価額にかかる消費税額を資産の取得事業年度において一括控除できます。従って、高額な設備などを導入した場合には、消費税の還付を受けられるケースが少なくありません。
・一方、従来のリースは、その大半が賃借費用(課税仕入)としての扱いでしたから、支払った額にかかる消費税額しか控除できませんでした。
・ところが、今回の変更により、リース取引も売買取引とみなされることになりました。つまり、リース資産を取得した場合でも、リース料総額にかかる消費税額を取得事業年度に一括控除できることになったのです。(ただし、消費税の非課税事業者や簡易課税選択事業者の場合は、この恩恵を受けることができません。)
・この取り扱いは、中小企業などがリース料を「賃借料」として経理していたとしても同様です。実際の経理処理では、まずリース資産を取得した時点で、リース料総額のうち消費税部分を切り離し、仮払消費税/負債勘定(未払金など)で処理する方法が一般的だと思われます。この場合、月々のリース料については、支払った額を「賃借料」部分と負債勘定部分とに分けて処理することになります。いままでと全く同じというわけではないのです。
●同族会社概念の多義化
・同族会社には、同族会社(役員の認定、使用人兼務役員の制限、第二次納税義務、行為計算否認規定)、特定同族会社(留保金に対する特別税率)、特殊支配同族会社(役員給与の給与所得控除相当額の損金不算入)の3つの使い分けがあります。
★同族会社の判定は、上位3株主グループの持株割合50%超、
★特定同族会社の判定は、第1順位株主グループの持株割合50%超、
★特殊支配同族会社の判定は、業務主宰役員グループの持株割合90%以上です。
●持株割合とは
・この判定での持株割合とは発行済株式における所有割合ですが、自己株式がある場合には発行済株式数は自己株式数を除いた株式数によらなければならないとされています。
・自己株式の有無が判定に重大な影響を及ぼすケースは少ないでしょうが、所有割合が各判定の境界線の近くにある場合には、判定が逆転する可能性もありますので、注意が必要です。
●例えばこんな時
・ある会社の発行済株式数が100株で、オーナー経営者とその親族等で85株保有していたとして、特殊支配同族会社の判定を行うとします。特殊支配同族会社の該当要件は発行済株式の所有割合が90%以上であることですが、この会社は85%ですから特殊支配同族会社には該当しません。
・しかし6株の自己株式が存在していたとすると、自己株式を除いた発行済株式数は94株となり、所有割合が90.42%(=85株/94株)となり、特殊支配同族会社に該当することになってしまいます。
●持株割合だけではない
・ちなみに、会社法により様々な種類株式が発行可能になったため、各種同族会社の判定には発行済株式の所有割合による判定のほかにも、議決権数による判定、持分会社の社員数割合による判定も加わり、割合がいちばん大きいもので判定することになります。
・ここでの議決権数による判定でも、会社法で自己株式は議決権を行使することができないとされているため、議決権総数から自己株式の議決権数を除いて計算します。