・4月30日に平成20年度税制改正関連法案が成立し、即日公布されたことから、国税庁のホームページでは改正関連情報が続々公開されています。
●「所得税法等の一部を改正する法律」が公布・施行されました ●租税特別措置法(酒税関係)の改正について ●土地の登記に係る登録免許税の改正に関するお知らせ ●「平成20年5月 源泉所得税の改正のあらまし」を掲載しまし ●「平成20年分 所得税の改正のあらまし」を掲載しました ●「契約書や領収書と印紙税(平成20年5月)」を掲載しました ●「印紙税額の一覧表(平成20年4月1日以降適用分)」を掲載しました ●平成20年度税制改正に伴い様式(認定NPO法人関係)を改訂しました ●「個人の方が株式や土地・建物等を譲渡した場合の平成20年度 税制改正のあらまし」を掲載しました ●「認定NPO法人制度が改正されました」を掲載しました ●「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方(平成20年4月)」の掲載について ●「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方(平成20年4月)」の掲載について
それぞれの情報は、「国税庁ホームページの新着情報」から見ることができます。
・5月9日に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業事業承継円滑化法)」が参議院本会議で可決、成立しました。この法律は、このところの中小企業の減少傾向に歯止めをかけるため、経営者(オーナー)死亡等時における事業承継が円滑に進められるよう支援する法律です。
・この法律の柱は以下の3つです。
1.遺留分に関する民法の特例
2.(金融)支援措置
3.相続税の課税についての措置
1.遺留分に関する民法の特例
・民法には、法定相続人に一定の相続権を保証する「遺留分」という制度があります。しかし、自社株や事業用資産まで遺産分けをしなければならなくなると、事業後継者が事業を継続することが困難になる場合が出てきます。
・そこで、一定の手続きを経ることにより、後継者が先代経営者から生前贈与を受けた自社株について、(1).遺留分を算定するための財産の価額に算入しない、または、(2).遺留分の算定時における財産価額をあらかじめ決めておける(合意時の算定価額)-という民法上の特例を受けられるようにしています。
2.(金融)支援措置
・事業承継時においては、なにかと事業継続のための資金が必要になり、資金難に陥るケースがあります。そのような場合、(1).中小企業信用保険法に規定する普通保険等を別枠化する、(2).株式会社日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫が必要な資金を貸し付けることを可能とする-いう支援措置が受けられます。
3.相続税の課税についての措置
・事業後継者にとっては、自社株相続に係る相続税も悩みの種です。高い相続税を支払ってまで、後継者に事業を継続させることに二の足を踏む経営者も少なくありません。
・そこで、平成20年度中に相続税の課税について必要な措置を講ずるということが定められました。これについては、自民党の平成20年度税制改正大綱において、自社株に係る相続税の80%を納税猶予する制度を、平成21年度税制改正で創設することが明記されています。
・この法律の施行日は平成20年10月1日。ただし、「遺留分に関する民法の特例」については、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされました。また、「相続税の課税についての措置」については、平成21年度税制改正で成立することになりますが、平成20年10月1日に遡って適用できることになりそうです。
・中小企業が計算書類を作成するにあたって、望ましい会計処理が示された「中小企業の会計に関する指針」が改正されています。今回の改正は前回改正(平成19年4月27日)以降に改正された「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号)、および「リース取引に関する会計基準」(同13号)に対応したほか、法人税法の改正及び金融商品取引法の施行等を踏まえた所要の修正となっています。
・具体的には、棚卸資産の評価基準について「棚卸資産の期末における時価が帳簿価額より下落し、かつ金額的重要性がある場合には、時価をもって貸借対照表価額とする。」ということが明記されました。これは、いままで棚卸資産の評価方法として原価法を採用した場合にのみ適用されていた基準です。
・また、棚卸資産について、①災害により著しく損傷したとき、②著しく陳腐化したとき、③上記に準ずる特別の事実が生じたときは、その事実を反映させて(=時価で)帳簿価額を切り下げなければならないことに留意すべきとしており、その時価とは「原則として正味売却価額(売却市場における時価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除した金額)」とされています。
・一方、リース会計については、「所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。」ことが明記されました。これは、平成19年度税制改正で税法にも取り入れられた考え方で、平成20年4月1日以降に開始される事業年度に適用されています。
・ただし、法人税法では中小企業が従来どおり賃借料(リース料)として経理した場合は、償却費として経理したものとみなすこととしていることから、同指針でもそのことが留意点として記載されています。
・また、前述のように所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃借料(リース料)として経理した場合は、未経過リース料を注記するということになっていますが、重要性がないリース取引については、注記を省略することができるともされています。
・なお、「中小企業の会計に関する指針の適用に関するチェックリスト」については改正されていません。
・子会社が倒産の危機に陥れば、親会社は損失負担や無利息貸付、債権放棄などでなんとかバックアップしたいと考えます。しかし、そこに立ちはだかるのが「寄付金認定」のカベです。
・一般的に、親会社が子会社に無利息貸付けをしている場合、通常の貸付金の利息相当額を子会社に寄付したものと取り扱われます。通常の利率より低い利率で貸し付けている場合は、受け取っている利息と通常受け取る利息の差額が寄付金となります。
・また、子会社に対し債権放棄をした場合に供与する経済的利益の額も寄付金扱いとなります。会社が支出した寄付金額が一定の限度額を超えれば、超過した金額は損金算入できません。ただ、子会社の倒産防止のためやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものであれば、相当の理由が認められることを前提に寄付金には該当しないとされています。
・これを利用する場合、親会社は子会社経営危機の実態、損失を負担した場合はその額の合理性、再建管理体制などについて、当局への説得材料として示す必要があります。
・これに対して税務当局は、子会社は本当に倒産の危機にあるのか、過剰支援になっていないか、再建状況に応じて支援策を見直しているかなどを細かく調べます。また、特定の債権者が意図的に加わっていないか、特定の債権者だけ不当に負担を重くしていないか、または免れていないかなども確認します。
・平成20年分の路線価は7月1日(火)から閲覧開始が予定されています。例年、路線価は8月1日に閲覧が開始されていましたので、今年は1ヶ月早くなります。
・路線価とは、国税庁がその年の1月1日現在における宅地の評価価格を定めたものです。個別の土地の評価価格を定めるのは大変なため、道路に価格を付ける方式がとられており、そのことから路線価と呼ばれています。正式には相続税路線価といい、相続税や贈与税で宅地の評価計算を行うにあたり基準となるものです。
・なお国税局によると、「国税局・税務署ではIT化・ペーパーレス化を進めて」いることから、今年からは国税局や税務に路線価図等(冊子)の備え付けをしないことになるようです。路線価を調べる際には、国税庁ホームページの「路線価図等の閲覧コーナー」を利用するか、全国の国税局・税務署に備え付けてあるパソコンで閲覧することになります。
・国税局・税務署のパソコンを利用する場合、「混雑時はお待ちいただく場合があります」ということですからご注意ください。